Return to site

「「内部通報が多い企業」ランキングTOP100」について

· Compliance

週刊東洋経済(オンライン)は、今年も「内部通報が多い企業」ランキングTOP100」 を発表した。

この週刊東洋経済の記事は、内部通報が「企業の不祥事を防止する上で有効な手段の1つ」であるとしており、この点は正しい。しかし、従業員数と無関係に単に内部通報の数の多い順からランキングなるものを発表するのは意味がない。大切なのは、イレギュラーな事象を最初に目撃する可能性がある従業員からできるだけ早く内部通報をしてもらうことによって早めに軌道修正し大きな不祥事を防ぐ、ということである(拙稿「内部通報が大切な本当の理由」参照)。つまり、「従業員の声を早めに聞けているか」が大事なのであり、従って、従業員人口あたりの内部通報の件数が指標になるのであって、従業員数を無視して内部通報の件数だけを比較するのは全く意味がない。この週刊東洋経済の記事は、内部通報の数だけ基づくランキングを示し、上位63位までが年件の件数が100件を超えた、としているが、従業員数を無視し、上位63位までが年間100件越えだ、という言い方をするのは全く意味がない。

ただし、この記事は以下のように述べている。

「この内部通報の件数はどの程度が適切なのか一般に使われている基準はない。ただ、『CSR企業総覧』編集部では2011年度からこのデータを収集してきた経験から、従業員数と対比するのが1つの見方であろうと予想している。」

この点は全くその通りであって、ぜひ来年からは従業員人口あたりの通報件数のランキングだけを示してもらいたいと思う。件数だけのランキングは意味がないだけではなく、ミスリーディングである。

さらにこの記事は次のように述べている。

「われわれは「1年間で100人に1人が通報する」環境が、通報制度が機能している目安の1つとみている」

この点は誠に興味深い。世界各国のクライアント企業に内部システムを盛況する企業の一つであるNAVEX社は毎年ベンチマークレポートを発表しているが、それによると、ここ数年、2738社の内部通報案件(p.3)について、従業員100人あたりの年間通報件数の中央値は1.4である(同報告書p9)。この値は、週刊東洋経済が提唱する1.0と近い。

なお、NAVEX社が平均値ではなく中央値を用いているのは、異常な値があると平均はそれによって大きく左右されるのでそれを防ぐためである。例えば貧困な村に大富豪が引っ越してきたときの村民の平均所得が実態を全く反映しない値になるのと同じである。これに対し、村民の数がある程度存在していれば、数の順に並べたときの中央に来る値である中央値は、大きくは変動しない。

 

週刊東洋経済の記事はさらに次のように述べている。

「単独従業員数を基準にすることは課題も多い。通報可能な対象者はグループ会社を含む場合もあるし、正社員以外のパートやアルバイトが含まれる場合もあるからだ。通報可能な人数が明確でないため、単独の従業員数を使って算出した値はあくまで参考データであることには気をつけていただきたい。」

この点も正しい。コンプライアンス違反は、どの子会社で発生しても、その結果親会社の株価に影響する。連結子会社全体の年間通報件数をCSR報告書で発表すべきであり、それをしておらず当該(上場)企業自身の値しか公表していない企業や、公表している値が当該企業自身の値なのかそれとも連結子会社のでデータも含むのかを明示していいない企業のCSR報告書は、社会の期待に応えていない。

なお、この週刊東洋経済の記事でも触れられているが、関西電力が本年8月7日に発表した「関西電力グループレポート2019(CSR & Financial Report)」によれば、2018年度における同社の「コンプライアンス相談窓口受付件数」は73件(p.75)であり、従業員数は単独で18,884人(連結で32,597人)(p. 77)である。つまり従業員100名あたりの年間通報件数は、この73件という数字が単独レベルの話なら0.38、 連結子会社を含むのであれば0.22となり、いずれにせよ、従業員100人あたり年間通報件数1.4という数字と比較すると低く、「従業員の声を聴き、早期改善に役立てているか」という点では合格点に達していなかったことがデータで示されている。

 

All Posts
×

Almost done…

We just sent you an email. Please click the link in the email to confirm your subscription!

OK