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内部通報が大切な本当の理由

· Compliance

自社の内部通報の数が少ないことを自慢する企業がある。逆に、自社の内部通報の数の公表を躊躇する企業もある。いずれも不健全である。「ある程度の数と内容があってそれを改善に生かしている」のが正しい。

以前、「会社のDNAを変える方法」で述べた通り、数多くの企業の、ホットライン(内部通報)に寄せられる数の中央値は、従業員100名あたり年間1.4件である。その数が0.3未満なら、その企業は、釣鐘状の分布図の中央80%の外(つまり左端)に位置している。つまり、問題の芽を早期に知ることができず、ことが重大になるまで気づかない企業だ、ということである。どのような効果的なコンプライアンス教育を行っても、小さな違反は必ず発生する。その可能性をゼロにしようとすると、ビジネスを止める以外にない。結局、大切なのは、違反の初期の段階でいかにそれを発見するか、である。早期に発見することさえできれば、軌道修正し、事業目的を阻害せずに違反を起こりにくくなるようにプロセスを改善し、大不祥事を防止することができる。

違反の多くは、ある瞬間に突然発生する単発的な事象ではない。長期間かけて連続的に(徐々に悪化しながら)発生する一連の事実の結果である。違反の初期の段階では、しばしば、本社(例えば東京)から遠く離れた場所(例えば南米や中東)でイレギュラーな事象が発生しており、それを目撃している人がいる。目撃者は、そのような離れた場所(いわば現場)にいる人であって、コンプライアンス担当者ではないし、本社の役員室フロアの会議室で取締役会に参加している社外取締役でもない。本社から遠く離れた「現場」にいるだれかがまず最初に、イレギュラーな事象を目撃し、「これは正しくないような気がする」と思う瞬間がある。これが、その企業にとって、不祥事の芽を発見することができる最初のチャンスである。そのチャンスを生かすのが、不祥事を、せいぜい救急絆創膏で直せる程度のもので終わらせるための最高の処方箋である。

どうすれば良いか。そのような「これって正しくないような気がする」という事態を目撃した人がそのような懸念を報復の恐れなく(望むなら匿名で)報告することを奨励(さらには義務化)することであり、それを容易にさせるグローバルに統一されたシステムを用いることである。違反の芽はしばしば遠く離れたところにあるからだ。

なお、そのような懸念があるときにそれを報告することを職場のカルチャーにしない限りそのような制度は使われないので、そのようなカルチャーをつくることを個々の職場の上司の義務にしなければならないし、報復の絶対禁止も貫徹しなければならないが、それについては機会を改めて書くことにしよう。

さて、それでは、実際に不祥事を起こした企業におけるこの数値(従業員100名あたりの年間通報件数)はどうだったのだろうか?この数字を公表している企業は必ずしも多くない。

まず、東芝を見てみよう。東芝のCSRレポート(2018年版)http://www.toshiba.co.jp/csr/jp/report/download.htm によると、内部通報(ホットライン)の数は2017年度で合計286件であり(p145)、従業員数(連結)は141,256人(p4)であるから、従業員100名あたりの年間通報件数は0.2であり、前述の中央値1.4よりもかなり低いだけではなく、下限0.3を下回っている。

これに対して、日産自動車はどうだろうか?日産自動車は2018年7月にSUSTAINABILITY REPORT 2018を発表した。

それによると、2017年度、グローバルで1,022件の問題や質問が報告された(p204)、とあり、連結ベースでの従業員数は138,910人(p213)とあるので、従業員100名あたりの年間通報件数は0.73となる。中央値の約半分ではあるが、分布図の中央80%内にあり、従業員の声をそれなり聞けている、ということになる。

ちなみに、同業他社のフォルクスワーゲンの Group Sustainability Report 2014 (http://sustainabilityreport2014.volkswagenag.com/sites/default/files/pdf/en/Volkswagen_SustainabilityReport_2014.pdf) によると、従業員592,586人で年間通報件数が140件なので、この数値は0.023であった。 

ちなみにGEはどうだろうか?GEでは2017年、4,440件を超える”integrity concerns”が報告された(https://www.ge.com/sustainability/integrity)。2017年の従業員数のデータはおそらく約313,000だ(https://www.statista.com/statistics/220718/number-of-employees-at-general-electric/)。 つまり、従業員100名あたりの年間通報件数は、1.41であり、ほぼ中央値である。ちなみにGEはかなり詳細な​データを公表している。

[GEの2019年のデータについてはここをクリック]

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