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カルロス・ゴーン事件

FCPAの観点から

· Compliance

FCPA

日産自動車はADR(米国預託証券: American Depositary Receipt)をアメリカ合衆国で発行しており(https://quotes.wsj.com/NSANY)、米国FCPA (Foreign Corrupt Practices Act)の適用を受ける”issuer”である。

第三者への支払

報道によると、日産自動車は、カルロスゴーン氏の姉との間で実体のないアドバイザー契約を結んでいて、日産が14年間で計75万5千ドル(約8230万円)を支出しており、また、日産は「正規の手続きを踏まず、ゴーン被告が育ったレバノンのセント・ジョセフ大学に11~15年、計100万ドルを寄付」したという。

もちろん、上記の支払が賄賂に関連したことを疑わせる事情は、本稿執筆時点では、筆者の知る限り、何ら報道されていない。しかし、もともと、第三者(例えばエージェント)の起用や寄付については、しばしばそれが賄賂の隠れ蓑に使われることから、米国FCPAの適用を受ける企業としては、リスクに応じた事前のデュー・ディリジェンスを求める内部ルールを定めてそれを実行していなければならなかったはずである。報道を見る限り、日産ではそのようなプログラムが仮に存在していたとしても、それは必ずしも効果的ではなかったようだ。

罰金の額

同法違反による罰金の額は巨額になることがある。それは、賄賂の額の多寡と全く比例していない。過去の事件を、賄賂の額と罰金の額を比較したレシオ (Sanction to Bribe Ratio)でみると、例えばRalph Lauren事件では約58万ドルの賄賂に対し、罰金の額は約88万2000ドルであり、このレシオは152%であった。この数値は、FCPA違反の案件の中では、もっとも低い部類に属する。このような「軽い量刑」に至った事情としてこのRalph Lauren事件で米国司法省が挙げたものが、適時に自己申告をし調査に協力し全世界でのリスク・アセスメントを行なったこと、早期に全面的な改善策を実施したことである。その改善策の内容として、米国司法省は、FCPAトレーニングを全世界の従業員に対して行い、FCPAポリシーを強化し、第三者エージェントのデュー・ディリジェンス・プロセスを強化し、問題のある行動をした従業員とエージェントを解雇し、従業員ホットラインの運用を開始し、コンンプライアス専門のロイヤーを社内で雇用したことなどを挙げている。

これに対し、事案によっては、このレシオがその10倍以上、1500%を超えることもある。

考慮されるファクター

FCPA違反の調査を開始するかどうか、調査を終結するかどうか、の判断において司法省が考慮するファクターは9つある(米国司法省のA Resource Guide to the U.S. Foreign Corrupt Practices Act を参照)。そのうちの一つが「当該企業の既存のコンプライアンス・プログラムの存在とその有効性」であり、もう一つが「再発防止策(効果的なコンプライアンスプログラムの策定(または既存プログラムの改善)とその実行、担当マネジメントの変更、不適切な行動をおこなった者の解雇その他の懲戒処分、損害の賠償、関連政府当局への協力等を含む)」である。

効果的なコンプライアンス・プログラム

ここで、何が「効果的なコンプライアンス・プログラム」か、については、上述のA Resource Guide to the U.S. Foreign Corrupt Practices Act のp56 - p65が詳細に記載している。

これをより簡潔にまとめたものとして、Evaluation of Corporate Compliance Programs がある。この文書に記載された 11個の項目のうちの一つが、Third Party Management(エージェントその他の第三者の管理)である。今回報道されている内容からは、ブラジル (CPI:37)、サウジアラビア (CPI: 49)、レバノン (CPI: 28)、という、リスクの高い国における、日産の事前の第三者のデューリジェンスが存在していなかったか、またはそれが極めて脆弱であったことが伺える (CPI: Corruption Perceptions Index について)。それが日産の全般的な問題だったのか、それとも、カルロス・ゴーン氏が直接関与した案件のみに関する極めて例外的な事象だったのかは、報道からは明らかではない。

いずれにしても、米国司法省やSECが、FCPAの観点から、カルロス・ゴーン氏に関する報道を注意深くフォローしていたとしても、全く不思議はない。

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